相原正明の個人オフィスのホームページです

2018年4月〜2019年3月

メールマガジン 第94号〜第97号

第97号

謹啓 何年振りかで風邪に捕まってしまい、すべての活動が急停止となりました。でもたまには肉体を主に精神を従にして透明感のある生活を送れるのも幸いかもしれません。
いかがお過ごしですか。メルマガをお届けいたします。

相原正明行政文化小園 メールマガジン第97号(H31.2.2 )

― 政策の中心に「文化力」を ―

昨年、知人の若手芸術家が急逝した。絵画で身を立てることを基本としながら、それを主業とすることを日本の文化環境にはばまれた形のまま旅立たれたような気がしてならない。
また、緊縮財政を余儀なくされている自治体では、地域住民の創作活動を助長し高める文化ホール的施設が老朽化していても、建て替えの話が全く進まず、継続的な文化活動の中核となるべき人材の計画的育成ができないとの話も伺った。

国政や自治体施策の中で、文化をどう捉え対応していくべきなのであろうか。そもそも文化とは何か、また文化の力をどう認識すべきか。広辞苑においては、文化とは「人間が自然に手を加えて形成してきた物心両面の成果。衣食住をはじめ科学・技術・学問・芸術・道徳・宗教・政治など生活形成の様式と内容とを含む」とされ、芸術文化に留まらない極めて広範囲な内容となっている。
また、文化力という言葉は、かつて文化庁長官を勤めた河合隼雄氏(故人)が長官就任(2002年)のあいさつにおいて「文化の力」と表現するとともに「経済と文化は国が栄えるための車の両輪」との考えを示したことを契機に広く使用されるようになったとも言われる。

文化庁では、文化力を「文化の持つ、人々に元気を与え地域社会を活性化させて、魅力ある社会づくりを推進する力」と定義づけ、「文化力」プロジェクトを推進している。現在四つの地域(関西、丸の内、九州・沖縄、霞が関)と四つのテーマ(修理現場、市民、発掘現場、大学)ごとにプロジェクトを立て、文化力ロゴマークやホームページを活用した広報活動など、文化力を発信するための取組みを幅広く展開している模様である。

一部地域にとどまっていることや文化庁の予算・施策の範囲内という限界が感じられて物足りないが、今後の発展可能性を秘めた理念に期待し、国政の基本方針にまで昇華できればと望みたい。
民間の研究所による世界の都市総合力ランキングでは、その基礎となる六つの分野の一つに「文化・交流」があり、その指標の中には「アーティストの創作環境」「文化・歴史・伝統への接触機会」「劇場・コンサートホール数」が含まれている。ここには都市力の要素として文化力を捉えていることがうかがわれる。

まだまだ遠い道のりではあるが、今後、国政や自治体政策の中心軸に文化力が位置づけられ、奥深く根源的なパワーが国や地方に蓄積されていくことを望む。

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工藤玲音さん

いわて未来研会報の取材で、最近注目の二十代の女流歌人、俳人、エッセイスト工藤玲音(れいん)さんのご協力をいただきました。その歌を紹介します。応援者が日々増えているようです。私もその一人。

雪の上に雪がまた降る東北といふ一枚のおほきな葉書

小園亭主敬白

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第96号

謹啓 青い空に真赤な梅擬と真っ黄色の吊るし柿が音楽を奏でるように色を添えています。つながり蜻蛉も最後の仕事に励んでいるようです。
ご無沙汰しております。メルマガをお届けいたします。

相原正明行政文化小園 メールマガジン第96号(H30.11.17)

― 人口減対策の「交流」を ―

2009年日本の総人口は、遂に前年比マイナスとなり人口減少時代に入った。30年以降毎年100万人ずつ減り、48年には1億人を割ると見込まれる。
地方にあっては、さらに深刻の様相であり、14年に発表された増田寛也氏のレポート「地方消滅」では、40年までに約半数の896市区町村が急激な人口減少により消滅する可能性が高いとするショッキングな見通しが示された。

県や市町村は、こうした動きに敏感に反応し、人口減少対策の計画を打ち出した。人口の自然減対策として結婚支援事業、子育て環境改善事業などの施策、社会減対策として産業振興、働く場の確保、医療・福祉・教育・文化の充実などの施策を立て、必死の展開を見せている。

こうした危機意識や緊急的な施策展開が落ち着きを見せた時、次に必要となるのは、人口減少の現実を前提とした経済・産業の振興や地域の安全・安心対策の深化と考えられる。さらには地域の沈滞による文化の劣化対策も必要であろう。

この場合の対策の重要ポイントの一つとして、「交流」が挙げられる。広い意味での人の流れ・動きの観点である。国際的な面、国内的な面の両面がある。
国際的な面では、最近のインバウンド(訪日外国人旅行者)の急進展が注目される。日本全体では17年に前年比19.3%増の2869万人回で過去最多を更新している。同年の岩手は26万余人回で前年比59.2%増となっている。
言うまでもなく、国内の人口減で低下した購買力を補うものであるが、単に経済効果のみならず、リピーターを含めた旅行者との交流による地域の活力向上も期待される。どのようなひなびた地域でも工夫次第で訪れていただくことが可能である。

もう一つの国内的な面では、従来からの観光客やグリーンツーリズムによる交流に加えて、様々な新しい取組も試みられている。人口減と高齢化の進展で農作業、雪搔きなど自らの力では限界が感じられる地域において、都市部の学生など若者がボランティアとして一定期間滞在し、交流しながら農作業等を手伝う活動がある。
現在は大学主導で行われ、地域ボランティアセンターの設置にまでつながる実践例が出始めている。若者側からも貴重な人生経験として評価されているようである。地域の保持といった消極的発想のみならず、文化面を含めた地域の活力源とするという積極的発想が大切である。

人口減少社会における地域活力の維持・発展のため、このような交流の拡大策について、行政、地域、民間が力を合わせて取り組むことを期待したい。

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かつて軒先にずらりと並んだ柿を見ているうちに、リズムを感じて「吊るし柿ドレミファドレド ファソラシド」と俳句を作ってみたことがありました。
日一日と寒さが募るようです。くれぐれもご自愛願います。

小園亭主敬白

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第95号

謹啓 わが家の凌霄花(のうぜんかずら)が小山のように競り上がり、離れた位置から眺めると緑のコップに入った大きな橙(だいだい)色のかき氷にも見えます。
ご無沙汰しております。メルマガをお届けいたします。

相原正明行政文化小園 メールマガジン第95号(H30.7.17)

― 減反廃止乗り切る施策を ―

「最近における米穀事情は、これを取りまく諸情勢が極めて深刻で容易ならざるものがあるが、あの荒廃した減反休耕田の惨憺(さんたん)たる姿をながめるとき、誰が涙せぬものがあるだろうか」とは、1970年に減反政策がスタートした2年後に書かれた元食糧検査所員の老農夫の手記である。

45年の終戦直後の食糧難は深刻を極め餓死者が相次いだ。その後コメの生産技術の進展もあり増産体制が全国的に進み、ようやく日本人が名実ともに米を主食とすることができるようになった。
しかし、農家からの買取価格より消費者への売り渡し価格が安い逆ザヤ制度であった食糧管理制度の赤字が拡大し、遂に70年、一定の転作面積の配分を柱としたコメの生産調整がスタートしたのであった。この減反政策が半世紀近くにわたって続き、減反面積の割合はおよそ4割に達したと言われる。

減反はコメの価額を安定させ、農家所得の維持に貢献した半面、補助金や関税措置によって市場価格から遊離した農業生産を奨励することにつながり、食料品の物価高や国税の浪費を招いたなどの問題点も指摘されてきた。
2013年11月、第2次安倍内閣は、環太平洋連携協定(TPP)をにらみ、農家が自らの経営判断で作物を作れるようにする農業の実現を図り、農地集約を通じた農家の競争力強化を促すとして、18年で減反政策を廃止すると決定した。

減反廃止初年度の全国のコメ生産見通しは、増産による価格暴落への警戒感や麦・大豆、加工米、エサ米の作付けを行った場合の手厚い補助金の存在により、主食用米の生産量は僅かに増える程度で価格も大きくは動かない見通しである。

しかし、市場のニーズに合わせ、海外の安いコメにも対抗できる競争力の強いコメ農家をつくる流れが加速するとみられることから、大規模農家や農業法人への農地の集約が進み、小規模農家が米から野菜への転換を迫られるなど農村が激変の時代を迎えることは必至とみられる。
とりわけ条件の悪い耕地が存在する中山間地の農村では、農地集約もままならず、米よりも手間のかかる野菜などへの転換が進まず、ひいては農地の荒廃を招き、農村地域の人口減に拍車をかける可能性がある。

減反廃止後の中長期展望に立ち、経営規模の大小を問わず、それぞれの農家がこの潮流に的確に対応し、所得を確保し、先祖から受け継いだ農地と農村地域を維持していけるような新しい強力な施策が一層求められる。
減反廃止を乗切る農業者そして政治家、行政、農協などの一層の奮起を期待する。

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冒頭の手記は、80年に83歳で死去した祖父藤治郎のもので、残されている唯一の文章の一節です。生涯を農に捧げた人でした。
猛暑の中くれぐれもご自愛願います。

小園亭主敬白

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第94号

謹啓 つい最近まで雪搔きで苦労していた庭に特に頼んだわけでもないのに草が勢いよく伸びてきています。もっとも水仙などの花々も一緒に姿を現してくれるのは嬉しいですが…。
お変わりありませんか。メルマガをお届けします。

相原正明行政文化小園 メールマガジン第94号(H30.4.28)

― 医師偏在是正政治に期待 ―

「せっかく娘が里帰り出産を希望してもこの地域ではできないことが分かったんですよ」とため息交じりに話す友人に対して、うまい相槌が打てず、悔しいような残念なような心持ちが交錯する。同じ日本に住みながら、同じ岩手に暮らしながら地域の中核的病院に産婦人科が置かれていない地域にはこのような事態が生ずる。これは産婦人科医が少ない上に地域的に偏在していることによる厳しい現実を示すものであるが、事は産婦人科のみの問題ではない。

そもそも地方都市やいわゆる田舎の地域には医師が少なく、自治体病院をはじめとする医療機関は最小限の医師確保に四苦八苦している現状にある。
国内に医師が少ないというより偏在しており、東日本が少なく西日本は多い西高東低であり、さらに医師不足割合では岩手が全国で最も高い(2010年国調査)。

かつて医師の勤務地を決める上で決定的な影響を持つと言われた医科大学の教授率いる医局はどういう役割を果たしているのか。こちらもある時期からの医師臨床研修制度の導入等により、その力を弱め、自らの大学病院への医師確保すら大変な事態もあり、医師派遣の要請に応じられない状況となっている。
新人医師は多彩な症例があり、最先端の医療を有する都市部の大病院で研修し、そのままとどまる人が多いと言われる。無論、医師側の子弟の教育をはじめとする自らの人生設計に対する考え方にも起因し、医師の地域偏在が進んでいる。

これに対して地方の自治体側も医師養成奨学金制度を手厚くするなどして、若手医師が地方にとどまりやすくなる措置を必死で講じている。しかしいかんせん絶対数が少なく、抜本対策までは届かない。

ここはやはり政治の出番である。岩手県では11年に地域医療基本法(仮称)を提案し、国による全国レベル、都道府県による二次医療圏レベルでの医師の適正配置などを進めるよう国に要望活動を展開してきた。腰の重かった国もここへ来て、医師偏在対策としての医師法および医療法の改正法案を通常国会に提出した。
この法案には、医師の少ない地域での勤務を促す環境整備や医師少数区域等において一定期間勤めたことを国が認定し、インセンティブ(昇給、昇格など)等の対象とすることなどが盛り込まれている。

いよいよこれまで実質野放しの医師偏在問題に具体的解決策をもって政治の光が当たり出した。さきほどの娘さんの里帰り出産がどの地域でも可能な日が訪れるかもしれない。この法案に大い期待し、しっかり見守りたい。

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たんぽゝや長江濁るとこしなへ(山口青邨)。同じ季節を感ずるのにこのように雄大な発想と共にとは思うのですが…。
年度初めで何かと気忙しいと存じます。ご健勝でお過ごしください。

小園亭主敬白
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