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平成19年度相原正明市長マニフェストの外部評価結果

平成19年度相原正明市長マニフェストの外部評価結果

1.趣旨

相原市長マニフェストについて、その進捗状況を毎年公表することとしており、初年度の平成18年度実施状況については、平成19年5月8日の定例記者会見においてマニフェスト実施状況の概要について公表したところであります。
マニフェストには通常多くの政策が盛られており、その全体について市民(有権者)個々が現状をチェックすることは困難であります。そのため、マニフェスト作成者(市長)が一旦自己評価し、それを有権者や専門家が評価・検証するという方法が考えられます。中立的な専門家(団体)へ依頼し中間の進捗状況や政策目標の達成状況などについての評価結果を報告いただき、それを市民の皆様に判断していただくことができます。
このような趣旨から、平成19年度末における進捗状況についてより客観的、専門的に分析、検証していただくことを外部の団体に依頼し、その評価結果について公表するものであります。

2.評価を依頼する団体について

早稲田大学マニフェスト研究所は、早稲田大学総合研究機構のプロジェクト研究所の1つであり、同研究所は早稲田大学の専任教員が核となり、共同研究を前提とする研究課題に取り組んでいます。
マニフェスト研究所は、北川正恭政治経済学術院教授を所長に、10名の研究員教授、11名の客員研究員等で構成され「マニフェストに関する総合的研究」を研究テーマに、2004(平成16)年4月1日に設立されました。マニフェストは、守られるべき外向き(有権者、納税者向き)の公約として、マニフェストを中心にその実行に必要な基盤を整備するための諸課題について、マニフェスト型政治の推進、普及、それを支える学術的研究に取り組んでいます。その成果については、同大学院公共経営研究科の発行する「早稲田パブリックマネジメント」をはじめとし、各種メディアで公表されています。
また、ローカル・マニフェスト検証大会(これまで2回開催)を開催し、著名な知事や首長のマニフェストを数多く検証、またローカル・マニフェスト推進大会を開催し、マニフェストの意義を明らかにするなど、ローカル・マニフェストの普及・検証・推進に関し、国内において専門的、先駆的研究所の1つであるといえることから、同研究所に市長マニフェストの中間評価を依頼したものであります。

3.評価結果の公表

市は18年度と同様の様式で作成したマニフェスト進捗状況の資料を同研究所に事前に提出しました。同研究所の林紀行事務局長が4月16日~17日、奥州市を訪れ、市長はじめ関係職員等へのヒヤリングを実施されたうえで、別紙の中間評価結果資料を同研究所より提出いただいたものであります。6月3日の記者会見に作成の実務を担当された林紀行事務局長が来奥され、マニフェストの評価結果について直接発表いただきました。

早稲田大学マニフェスト研究所(平成20年5月26日)

マニフェスト中間評価結果(平成18年~19年度実施分)

1. 実行過程 33点/40点
2. 進捗度 30点/40点
3. 取組全般 15点/20点
4.総合評価 78点/100点

1.マニフェストの実行過程

①マニフェスト行動計画

  1. 市長マニフェストを受けて、政策実現のために取り組もうとする事務事業、手段、手法、目標、責任者を明記した「マニフェスト実施状況管理表」を作成している。これにより、1年間の行動計画を明らかにし、その計画の実施状況を内容、実績、成果の点から内部管理を行っている。
  2. 行動計画は、毎年度(4月~3月)に行うことを期限を明示して作成されているが、この間に少なくとも1回は見直しをするなど、行政の計画として適切に機能していると言える。また、予算の中でも、マニフェストに関する事業は、そのことを明記してあり、マニフェストが行政運営の計画、実行、評価、見直しの各段階に落としこまれている。
  3. 進行管理表では、当該年度の目標しか設定されておらず単年度主義となっている。このため、複数年にわたって実施される政策の進捗状況のチェックは困難にならざるを得ない。また、市長の任期の4年をこえて実現する政策については、より詳細な説明が必要である。

②総合計画との関係

  1. 一般に、新しい市長が就任した場合、マニフェストと既存の総合計画との整合性が問題となる。ただし、奥州市は合併によって新設された自治体であるため、既存の総合計画との問題は生じなかった。また、マニフェストを組み入れる形で総合計画が作成されており、行政運営は1本の軸に基づいて行われている。
  2. マニフェストの進行管理は総合計画とリンクして実施されており、マニフェストと総合計画のPDCAサイクルが連動している。
  3. 総合計画は、平成19年4月から10年間の計画となっているため、今後、第2期マニフェストサイクルに入る場合には、マニフェストと総合計画の関係を検討する必要が生じる可能性がある。

③総合計画との関係

  1. マニフェストを実現するために、当選直後に、市長が自ら講師となって、マニフェスト講演会を開催したり、職員向けのメールや訓示などでマニフェストについて言及するなど、自治体のトップとしてマニフェストを実現しようとするリーダーシップが確立されている。
  2. 合併後の混乱を避けるために、マニフェストに掲げられた各政策の実現に向け平成18年4月より専任の職員(推進担当補佐)を配置し、政策の実現に努めてきた。この点には、マニフェストを実行するという市長の強い決意が見て取れる。また、3年目以降は、政策企画課が組織として対応していくこととなっており、より高いレベルでのマニフェスト型行政運営モデルを構築しようとしている。
  3. 「マニフェスト実施状況管理表」は、市長と部局長クラスとの「政策合意」の締結といった形をとっており、政策実現の方向性が明らかにされている。ただし、この管理表は、部局長間、職員間で共有されていない。

④情報公開

  1. マニフェスト」および平成18年度のマニフェスト実施状況については、奥州市HP上などで情報提供されているが、市役所本庁舎、支所では実物が見れず、積極的な情報公開とはなっていない。
  2. 広く市民からの意見を求めるという点では、マニフェストの情報提供に関するわかりやすさ、使いやすさに対する工夫が足りず、市民からの反応も少ない状況となっている。

2 マニフェストの進捗度

    1. 平成19年度までの実施状況をまとめた「マニフェスト(政策全体編)実施状況の概要」の進捗度合では、23政策の進捗度合の内訳は、「達成、またはおおむね達成」が14項目、「(期限オーバーしたが)目標は達成、または概ね達成」が1項目、「達成に向かって継続進行中(期限到来前)」が5項目、「達成に向かって継続進行中(期限オーバー)」が3項目、「達成困難」が0項目となっている。
    2. マニフェストの後半部分にあたる地区別編については、各項目ごとに平成19年度事業実施状況及び今後の計画の概要についてふれられているが、政策全体編のように進捗度合はまとめられていない。地区別編は、新市建設計画から地区別の重要課題を抜粋したものなので、新市建設計画の側で進行管理されているが、情報公開という面からすれば不十分なものと考えられる。
    3. 外部評価では、全体編(23政策)では、「A 達成できたもの、順調に進んでいるもの」が15政策(65%)、「Bやや遅れて達成したもの、やや遅れて進んでいるもの」が7政策(30%)、「Cかなり遅れて進んでいるもの、方針を転換したもの」が1政策(4%)となっている。また、地区別編(27政策)では、「A達成できたもの、順調に進んでいるもの」が21政策(78%)、「Bやや遅れて達成したもの、やや遅れて進んでいるもの」が4政策(15%)、「Cかなり遅れて進んでいるもの、方針を転換したもの」が2政策(7%)となっている。この結果を総合すると、市内部の進捗度合はやや甘めの結果となっていると考えられる。
    4. 複数年にわたって行われる政策や事業の工程が明らかになっていないため、外部評価では、やや甘い評価にならざるを得ない項目もあった。また、内部管理では、インプット(投入)、アウトプット(算出)の指標のみであり、アウトカム(成果)※の指標が欠如している。したがって、A評価の項目が全体の74%を占めているにもかかわらず、成果という面からのプラス評価をすることはできない。

※アウトカムとは、成果・目的評価とも言われる。市民生活がどのように向上したかなどの視点が必要となり、単なる進捗度評価とは異なる。

3 マニフェストの取り組み全般

  1. 後半部分である地区別編は、新市建設計画から抜粋したものなので、実現性が高いのは当然のことであるが、全体編で掲げた政策の中には、実現が困難な内容も含まれており、挑戦的な政策を盛り込んだマニフェストを作成した点は、評価できる。ただし、一部の項目で不十分な内容の目標設定となっている。行動計画の目標を修正している箇所があるが、この点の説明が十分になされていない。
  2. マニフェストの全体的な取り組みからすれば、選挙での活用、当選後の行政計画への落とし込み内部での進捗管理の手法は、他の自治体のベンチマーキングの対象となるレベルにまで高められており、奥州市版マニフェスト型行政運営モデルが確立されていると言える。この点は、第2回マニフェスト大賞でも評価され、首長部門審査委員会特別賞を受賞した。
  3. 内部での進捗管理については、いくつかの課題が見られる。第一に、複数年にわたって事業を展開していくものについては、工程表を作成するべきである。次に、政策をすでに実現したものについては、それで終わりにするのではなく、政策を実現することによって、市民生活にどのような効果や成果があったのかをわかりやすく説明するための指標を検討すべきである。
  4. その他の課題をあげるとすれば、部局長、担当者レベルまでしかマニフェストの政策内容が浸透していないこと、充分な情報公開システムが構築されていないこと、市民参加が必要な政策がいくつかみられるが、市民との協働が不足している点である。
  5. 今回の中間評価では、低い評価となった項目もあるが、今後の取り組みによっては、高い評価が得られると考えられる。外部評価を受けるのが今回が初めての機会となったが、マニフェスト型行政運営モデルを深化させるためには、評価で明らかになった課題を修正し、行動計画の修正に取り組むことが必要である。

マニフェスト評価書(政策1~23)(PDF文書)
マニフェスト評価書(政策24~50)(PDF文書)

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