メールマガジン 2025年4月~2026年3月
第 120 号(2025(R7).5.11)
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謹啓 お花見には行かれましたか。我が家では桜ではなく、リンゴの花を楽しみます。香りが何とも言えず良いですよ。 その後いかがお過ごしでしたか。 新年度初のメルマガをお届けします。
相原正明行政文化小園 メールマガジン第120号(R7.5.11)
― 食料安保 国政の基軸にして ―
食料自給率と食料安全保障の問題は、近くて遠い存在である。昨今の米不足、米価高騰の困った事態になるとその影が見え始める感じがする。いざという時、日本は大丈夫であろうか。
改めてみると食料自給率(国内の食料全体の供給に対する食料の国内生産の割合)の状況はまことにお寒い。カロリーベースでみると1965年に73%であつたものが、58年経過した2023年には38%と半分近くに低下している。その原因として、米の消費が減少する一方で、畜産物や油脂類の消費が増大する等の食生活の変化によると説明されている。21年おける先進7か国(G7)で比べると、カナダ204%、フランス121%、米国104%、ドイツ83%、英国58%、イタリア55%であり、日本の低さが際立って見える。
このような状態の中で、いざ食料の輸出入が滞ったとき日本は大丈夫なのか。これが食料安全保障の問題である。食料問題と密接に関係する世界の人口は、22年に80億人を突破し、国連の予測(24年)では80年代半ばには約103億人でピークに達するとしている。加えて気候変動等に起因する深刻な農産物の世界的不足、ロシアによるウクライナ侵攻のような国際紛争の現実化が食料危機の側面から強く懸念される。食料需給のひっ迫や食料価格の高騰などが起きると、輸出国では輸出制限を行い、自国の食料の安定供給を優先する傾向にあるとされるからである。
しからばその対策はどうか。農水省では国内の農業生産の増大を基本とし、加えて安定的な輸入と備蓄を行うこととしている。識者の中にはさらに国民の食生活の努力目標として国産の食べ物に興味を持ち、旬のものをバランス良く食べることを挙げる説もある。近年摂取量が増えている冷凍食品、加工食品の原料のほとんどを輸入に頼っていることが理由となっている。農業生産の増大では、政府目標にもある米の輸出拡大が大きな柱となる。輸出分はいざというときに国内に回せる「備蓄」でもある。米の増産は休耕田の復活につながり、環境保全、農村の活力・人口確保などの効果も期待できる。
以上述べた取組みは、国民の理解と協力の下、中長期にわたって継続して行われる必要がある。 食料安全保障を国政策の基軸と位置づけ、一貫性をもって継続的に国民の理解向上に努め、その協力のもとに力強く推進すべきである。
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開花したリンゴの花の香に触れたとき、島崎藤村の「初恋」の詩の「まだあげ初めし前髪の林檎のもとに見えしとき」の一節を思い起こしますが、その詩は秋の季節のものでした。 日々気温も高まってまいります。お元気でお過ごしください。 小園亭主 敬白
・ 本文は、令和7年4月9日付けの岩手日報紙「日報論壇」に 掲載されております。また、本メルマガに転載することについ て岩手日報社の許諾をいただいております。
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