AGRICO日記

2004年4月15日(木)
冬は冬なり、春は春なり。

田んぼの造成の仕事が一区切りついたので、今日から堆肥運びを始めた。
雪解けが早い今春は、周りの家々の農作業も急ピッチで進んでいる。中にはもう堆肥撒布後の耕起を終えている田んぼもある。田の造成や隣近所の頼まれ仕事で忙殺されていた私も、内心ちょっと焦っていた。
この堆肥は毎年転作田の草を積んで作ったものだけれど、中にはここへ移住した年に畳屋から頂いた古畳で作った堆肥もある。移住初年の苦し紛れの策だった。
堆肥を軽トラに積んでいると、目ざとく見つけて早速猫たちが三々五々やって来た。
堆肥の山に登ったり、追いかけっこをしたり、中には軽トラの下から顔だけ出して寝そべってるのもいる。
ホント、困るんだよなあ。機械や車を使っているときに近くにいられると!
うちの猫たちは、私が家から見えるところで仕事をしていると、大概誰かしら寄ってきては目の前でゴロゴロしたり甘え声で鳴いたりするのでちょっと困る。
そして夕方になると決まって御飯(餌)の時間を知らせに呼びに来る。
まったくうちには邪魔な現場監督ばかり多い。
冬の間は家から出たがらなかった猫たちも、今の季節になるともう黙っててもひとりで外に出て遊んでいる。
春は本当に素敵だ。爽やかな風が顔に快い。
夕食には土手からカンゾウを摘んで来て鍋に入れる。
畑の隅にカキドオシの可憐な花を見つけた。
畑にはびこって野菜に纏わりつく厄介なこの草も、こうして小さな姿で花をつけているのを見ると、かわゆく思えてくる。
冬は冬なりにゆっくり休めたし、時間に余裕があったのでいろいろなことに取り組めて楽しかったが、春も春で、更に更に素晴らしい。
一年で一番素敵な季節に、今いると思う。

2004年4月9日(金)
ヒヨコ7羽勢ぞろい!

今朝もいい天気だ。
猫と犬の餌をやったあとは、畑に出て鶏のために葉っぱを摘む。
先日の雨でアブラナ科の野菜たちが ”グン!”と背丈を伸ばしている。もう蕾をつけているのもたくさんあるので、もう少ししたら摘み取って食べよう。
背比べをしかけた若葉を間引きがてら一缶摘み取り、杉林の間を通って裏庭に回る。
やけに鶏小屋が騒がしい。いつもの鳴き声の中に違った声も混じっている。
そうか!あれはヒヨコの鳴き声だ。
しかしつい3日前に生まれたばかりのヒヨコが、あんなに大きく、成鶏に負けないほどの声で鳴くなんて。
いぶかしく思いながら行ってみると、ひよこが2羽、水鍋(水飲み場に使っている鍋)に落ちて必死で鳴いていた。まだ自分の力では脱出できないみたいだ。
ははっ。しかし随分元気だな。
ふと見ると、他のヒヨコたちも驚いたのかみんなパタパタと走り回っている。
3羽、4羽・・・みんなで7羽!
やっとヒヨコの全体数を数えられた。ヒヨコは意外と雌鳥の羽の下で寝ている時が多い。今までも時々数えようとしていたのだけれど、いつも母鳥の下なるものだから、一体全部で何羽いるのかわからないでいた。
そうか、7羽のヒヨコか!
すがすがしい春の日差しの下で、今日我が家には新しく7羽のヒヨコたちが正式に家族に加わった。
みんな元気に育ってな。
可愛らしいヒヨコたちは、やがて母鳥の羽の下にみんな隠れて寝てしまった。

2004年4月6日(火) 晴れ
ヒヨコの生まれた日。
今朝は朝霜がびっしり降っていた。
晴れたには朝方とても冷え込むときが多い。空は快晴。今日は暖かくなる気がする。
予想のとおり、とても暖かい一日になった。セーターももう用済み。バックホーに乗ってても、エンジンの熱気で運転席がムンムンする。またまたにわか春の真っ只中に置かれたみたいだった。
今日は一日中、朝から夕暮れまで田んぼの整地作業。ただモクモクと土を運んでならす。この冬に買い換えた軽トラはダンプ仕様。ダンプのお陰で、身体がとても楽になった。以前は10台も運べば翌日は疲れて仕事にならなかったのに、今回は30台運んでもまだ体力に余裕がある。
されども一日の仕事を終えて帰るときはさすがにグッタリとなっている。夕暮れ前。これから猫や犬、ニワトリたちに餌をやらないといけない。餌缶を水を持ってトリ小屋に行ってみたら・・・。いた! もう半月ばかりも前から抱かせていた卵だったが、とうとうひよこが生まれた。1羽、2羽・・・。2羽の可愛いひよこが生まれていた。
生まれたばかりだというのに、もう歩いている! ヨチヨチ、ヨチヨチ、なんて可愛いんだろう。きっと親鳥よりも立派に、綺麗になるに違いない。
ひよこが生まれ、我が家の畑につくしを見つけ、ふきのとうとカンゾウを採って夕食に・・・今日はなんと素晴らしい一日だったことか!
2004年4月4日(日) 晴れ
仕事の原点。
今日は3日ぶりに仕事日和。
昨日も晴れだったが、その前2日間続いた雪で地面は湿っていたから、今の私の仕事パターンからすると、「休日」となる。もっとも、「休日」なりに家の中ですることはたくさんあるのだが・・・。
そして今日は、かねがね頼まれていた物置小屋の解体作業をするため、遠野の知人の家に行った。
その方は、新規就農で田舎に移住したことから言えば、私の先輩にあたる。遠野の山奥で農業や民宿を営みながら、斬新な発想で次々に新企画を打ち上げ、地域の意識改革に一役も二役もかっているまさしく移住者のカガミみたいな人である。
とはいえ見方を変えれば、(新規就農者は大なり小なり皆そうであるが、)生きるためになりふり構わず精一杯今を生きている、だけのことではあるが・・・。
日曜日の朝、解体作業ボランティアが、4人集まった。(もちろん私もそのひとり。)早速にああだこうだと言い合いながら内部の片付け、屋根瓦のはがし方、と作業を進めていく。
みんなですると、作業も楽しい。これがひとりであれば、モクモクと、日頃面白くなかったことなどを思い出しつつすることになるのだが、2人、3人集まるだけで何となく活気が出て疲れもさほど感じず、時間の経つのも忘れるようになる。
すぐにお昼になって、そして夕方になった。
実は今朝起きたとき、腰に不気味な痛みがあって、嫌な予感(ギックリ腰!)がしたけれど、なんのなんの、楽しく働くうちにあっという間に一日が過ぎてしまった。
あぁ、これが本来の仕事なんだな。現代は農業と言わず何の分野と言わず。大方孤独な作業になってしまっていて、みんな我慢大会のように苦しみながら仕事を続けている。生産効率を追い求めた結果がこうなんだろうが、その間にうち棄てられたものの中に、実はもっと大切なものがあったのかもしれない。
共同作業の楽しみ、それを支えてくれる女性たちの手料理や暖かいもてなし。お金の勘定に囚われれば到底得られない充足感。
これが田舎移住を決断したときに、意識の奥で自分が求めたもののひとつだったのかもしれないな。
こんなことを思いながら、夕暮れ迫る中、猫や犬、ニワトリたちの待つ家路についた。
2004年4月2日(金)
自然からの贈り物。
朝起きたら、庭も畑も一面雪が降り積もっていた。
もう春が来たと思って、雪掻き道具も閉まったし、車のタイヤも夏タイヤに履き替えたばかりだったが、やはり天下の冬将軍はこの地が好きらしい。去る前に落とし土産をくれるつもりなのだろう。
子供の頃聴いた、イルカの「なごり雪」の歌が口をついて出る。
ここの気候にしては、なごり雪と呼ぶには随分早いとは思うが、今年のこの好天続きを見ると、本当にもうすっかり春になったんだなぁ。
この冬は暖かくて雪も例年より少なかった。しかも3月からまるで旱魃のような好天気が続いて、田や畑は例年になく乾ききっている。これでは草も野菜も、育つことができない。思えばこの雪は、冬将軍が植物と私たちのために与えてくれた、慈悲の雪なのかもしれない。
そういえば、このところ大風の日が続いているが、ひと風ごとに、ひと雨ごとに、季節は移り行く。
風は季節を運ぶ宅急便のようなものだ。
この風を、この雪を体中で受け留めて、一日いちにちを生きていこう。自然から生まれた私達に、自然はそのときどきに必要なものを与えてくれる。
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