AGRICO日記

2004年3月8日(月)
煙の向こうに見えるもの
今朝出炭した炭は今までで最高のできだった。
ドラム缶で炭焼をする場合、朝方から焚きつければだいたい夕方から夜にかけて火を止め、一晩おいた翌朝に出炭できる。1回に付き1俵(15kg)しか焼けないからこそできるスピード炭焼である。
10回ほど焼いてわかったのは、最大のコツは途中窯の中の材に着火した時に火を狭めるタイミング、そして炭材が炭になりきった時に火を消すタイミングだ。
窯の中は当然見えないわけだから、そのタイミングを吹き出る煙の色、匂い、たなびき方、それと温度で計る。炭焼は直接には見えないモノを周囲の観察を通して推測するという、優れた伝統技術だと思う。木を焼く、火を燃やすという、単純な行為の中にこそ、技として奥深いものがあるようだ。おそらく農業と同じで、する人によって上手下手がはっきりと分かれるものだろう。
私はもちろん初心者中の初心者だが、最初の頃は作業の大変さに比べて成果が挙がらず、炭焼とはこんなものだったのか!もうやめようか、などと思っていた。とりあえず1俵を目標にしたのだが、まるで達成不可能のように思えた。
そこを励まし、導いてくれたのが、隣りのジッちゃんだった。
炭焼歴30年のベテラン、炭焼としては既に40年前に現役を退いているとはいえ、この界隈に炭焼のプロ(だった人)はもう何人も存在しない。
戦争、シベリア抑留と辛酸を舐め、高度成長から取り残されたような故郷の発展のために尽力し、既に80を越えて皆からは芦沢の生き字引と敬われているジッちゃん。今なお私のため、人のために働いてくれている。ジッちゃん、ありがとう!
2004年3月7日(日)
飽食の冬
今日も炭焼をした。
炭焼の間はあまり長い間家を離れられない。今日で5日連続で焼いているので、最近ずっと家にいることになる。この頃はまた急に寒くなり、しかも毎日大雪だったので、まあ出かける気にもなれなかった。
明日は1週間ぶりに町に出て買い物などしてこよう。
食べ物だけならば、調味料さえ切らさなければ一冬買い物をしなくても生きていけるほどのものはあるが、こまごまとした日用品や燃料など、文化的生活をするのに必要なものはたくさんある。
6年前に脱サラして農業実習のため北海道に行った当初、自分の畑もお金も持ってなかったので、ひと月近くほどんど頂きもののジャガイモと玉葱だけで生活したことがある。それ以来今に至るまで、自分が食べたいと思うものは自分で作る努力をすることで、作物作りの技術を身に付けてきたし、また同時に生活費を抑えることができた。私が少ない収入で今日まで暮らして来れたのも、この生活スタンスがあったからだと思う。
食べ物に関して言えば、季節ごとに当然あるものしか食べていない。特に冬などは食べ物の種類が一番少ない時期で、今ならジャガイモ、カボチャ、里芋、白菜、大豆、それと秋に作り貯めた漬物などである。それでも米と雑穀、酒類はふんだんにあるし、ずべて無農薬栽培なので、一頃と比べたら天国のような食生活だと思う。本当にありがとい。
6年かかって、ようやくここまで来たんだなぁ、と、思えば感慨深い。


2004年3月6日(土)
炭焼の功名
今日も大雪。これで3日連続だ。もう朝から20cm位は積もっている。
炭焼も今日で9回目。だいぶ要領も覚えてきて、始めた頃と比べるとずっと楽に焼けるようになった。最初の焚き付けを1時間ほどしたら、後は家にいてコタツにあたっていられる。夜まで1〜1時間半おきに窯の様子を見に行くだけである。

さて大雪で家にいるとしても、したいことはたくさんある。料理を作ったりどぶろくを仕込んだり、保存食の整理をしたり鶏の餌の用意をしたり・・・。
おかしなことに、炭焼をしている間は家の中であまり炭を燃やさなくなる。なぜかというと、火箸や十能を炭窯に持っていってるので、囲炉裏が使えなくなるからだ。窯は家の前、見えるところにあるので、行く度ごとに持ち帰ればいいのだが、ついつい忘れて置きっ放しになっているのが実情だ。
さてそこで灯油ストーブの登場となるのだが、ストーブというのはこれまた便利なもので、お湯は沸かせるしいろいろ調理も出来る。鍋で野菜を煮込んだりはもちろんのこと、最近発明したのは、フライパンを使ってポテトチップスとジャーキーとを同時に作る方法だ。
今年は暖冬のせいか、今ジャガイモがいっせいに芽を吹き出している。早く食べないといけないので、毎日犬や猫、鶏に工夫して食べさせているが、この方法を発見したお陰で、毎日の酒のつまみにこと欠くことはない。
そういう訳で、我が家のストーブは休むことなく、いつも上に何かを乗せているのである。

2004年3月5日(金)
我が家のスーパー猫軍団(その2)
我が家の辺りには捨て猫、捨て犬が多いことは前回書いたが、それらを含めて最近の猫には昔見られなかった種が混じっているように思える。例えばうちの猫だけ見ても、1匹は明らかなアメリカン・ショートヘアタイプのトラ猫。、またアメリカン・ショートヘアの中のブルー・クリームという種類によく似たのもいる。そしてロシアン・ブルーの色変わり(ロシアン・シロクロとでもいおうか・・・)もいれば、ジャパニーズ・ボブテイルみたいなのもいるし、ふさふさ毛(長毛種)の色違いが2匹もいる。どれも他所から頂いたり捨て猫だったり、我が家で生まれたりした猫たちで、もちろんみんな雑種である。

猫の世界も国際化が進んでいるみたいだ。その反面、昔よくいた三毛猫はめったにお目にかかれなくなった。

ところで我が家では、猫たちを戸外で飼っている。零下16度の真冬でも、彼らは格納庫や物置小屋の中などで寝る。食事のときだけは家の中に入るが、暫くうちの中で思い思いにくつろいだ後はまた外に出て活動する。そしてみんな今まで風邪ひとつひかず、健康にすくすくと育っているから、この飼い方で正解のようだ。
人間と同じく、猫だって明日はどうなるかわからない身の上であろう。実際山に捨てられる犬猫が後を絶たないのを見ても、つくづくそう思う。将来どんな境遇にあろうとも、うちの猫には精一杯生き抜いて欲しい。そう思うたびに、強く、逞しく育つんだぞ!と彼らに言い聞かせている。

2004年3月4日(木)
お酒を楽しく飲む秘訣
今日はビールを仕込んだ。
酒造りを始めたのは脱サラして北海道に農業実習に行ったときから。もともと都会でサラリーマンをしていた頃も、自分で作った酒を飲みたいと思っていたのだけれど、忙しくてどうしてもする気になれなかった。そこで脱サラして真っ先に取り掛かったのがどぶろく作りである。
ビールは2週間おきに仕込んでいる。これが発酵に要する時間を考えた上でバケツひとつでできる最短期間だ。1回当たり大瓶20〜27本分が作れるし、年に換算すると25〜26回は仕込むことになるが、日常それだけ呑んでいる。肉体労働を主にした生活では、ビールがふんだんにあるというのはこの上なく嬉しいことだ。
その他日本酒もワインも作っているが、こちらの方は生産が消費に追いつかず、時に酒屋で市販品を買い足したりしている。特にワインはりんご園などでハネりんごが大量に手に入ったときにしか作れないので、常に品不足だ。年1年と敷地内に果樹を植えたりはしているけれど、ワインを原料ともども自家生産できるようになるのはまだずっと先のことだろう。
今日仕込んだビールはだいたい3ヵ月後当たりから飲み始める。どぶろくなので当然当たり外れがあるし、仕込んだ分すべてが良くできるわけではないけれど、自分の手で作ったものだから例えどんな出来であろうと美味しく飲めるのがいい。
よく「これはまずい!」「オレはグルメだから。」などとやたら言う人を見かけるが、おそらく食べ物を自分で作らない人なのかもしれない。

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